2005年度後期 線形代数学II 第1回質問シート集計結果


第1回の質問シートへの回答をありがとうございました。
授業でわかりにくかった点の指摘や授業方法に関する意見など,参考になりました。

以下に頂いた質問・意見とそれへの回答を載せます。意見に関しては,今後の授業にできるだけ
活かしていきたいと思います。

なお,このページの構成は以下の通りです。

  I. 授業内容に関する質問・コメント
  II. 授業方法に関する質問・コメント



I. 授業内容に関する質問・コメント

(1) 線形空間のイメージを持つには

  ・「線形性」をよくイメージするにはどうしたらよいですか?

  ・線形空間の概念がいまいちつかめていないので,レポート等ではその分野を多く出して,
   勉強させて欲しい。

「線形空間」という概念は,幾何ベクトルの概念を抽象化して,それを関数,数列,行列など,
他の様々な対象に適用できるようにしたものと考えてください。ですから,講義で新しい概念が
出てきたら,それを幾何ベクトルの場合に当てはめて,何を意味するのかを考えてみる
とわかり
やすいと思います。

また,「線形空間」は,第5章で出てくる「線形写像」と合わせて初めて十分な意味を持ちます。
今勉強している線形空間の様々な性質は,そのための準備なので,第5章に入ってから振り返っ
てみると,もっとよく意味がわかるはずです。

なお,第1回レポートでは,集合が線形空間かどうかを調べる問題を4題出したので,見てみて
ください。


(2) 線形代数の問題の証明方法

  ・線形代数の問題の証明のしかたがよくわかりません。授業の進み方はとても良いと思い
   ます。

線形代数では,イメージを持つことも大切ですが,数学の論理に慣れるための訓練という側面も
重要です。ここで,数学の論理とは,常に定義に立ち戻って考え,様々な性質を定義に基づいて
導いていくことを意味します。たとえば,ある集合が線形空間かどうか,線形空間のある集合の
要素が1次独立かどうかなどは,それぞれ線形空間の定義,1次独立の定義に戻って考えてみる
と,何を示すべきかが自然に見えてくると思います。このような見方で,教科書やノートの証明
を見直してみてください。


(3) 基底かどうかの判定について

  ・基底の例2で,1,x が基底でないのがいまいちわからないです。

この例では,xに関する2次以下の多項式のなす線形空間 R[x]_2(_ は下付き添字を示します)に
おいて,{1, x} は基底ではないことを述べました。これは,この集合が基底の定義を満たして
いない
からです。つまり,R[x]_2 の要素のうち,2次の多項式は,1 と x のどんな線形結合を作っ
ても表せないからです。この集合に x^2(^ は上付き添字またはべき乗を示します)を加えてできる
集合 {1, x, x^2} は基底となります。


(4) 行列式による1次独立性の判定法

  ・det(A)≠0なら1次独立という部分がなぜそうなるか,疑問に思っていたので,解決して
   すっきりした。

よかったです。逆に1次独立なら det(A)≠0 となることの証明ですが,これは,少し長くなるた
め,授業ではできませんでした。この証明には,教科書 p.28 に出てくる階段行列を使います。
行基本変形や行列式の性質などを使い,前期で勉強したことの良い復習にもなるため,近いうち
に証明を本HPに掲載しようと思っています(試験範囲には入れません)。


(5) p.90 の例題4.6について

  ・10/28の最後の問題で,k1 exp(ax) + k2 exp(bx) + k3 exp(cx) + k4 exp(dx) = 0 を微分して
   いるのはなぜですか?

実は,この問題は必ずしも微分しなければ解けないわけではありません。1次独立性を言うため
に必要なのは,k1,k2,k3,k4 に関する連立一次方程式で,係数行列が正則,右辺が 0 となる
ものを作ること
です。これが作れれば,係数行列の逆行列を両辺に掛けることにより,k1 = k2 =
k3 = k4 = 0 となり,定義より1次独立性が言えるわけです。この連立一次方程式を作る手段と
して,上式の左辺が任意の x について となり,したがって微分しても 0 となることを使いました。

しかし,他のやり方もあります。たとえば,上式に x=0,1,2,3 をそれぞれ代入すると,同じ
ように4本の式が出てきます。これらの式で A=exp(a),B=exp(b),... などと置けば,教科書の
行列で a,b,c,d をそれぞれ A,B,C,D に置き換えた連立一次方程式ができ,A,B,C,D が
相異なることから,全く同様に k1 = k2 = k3 = k4 = 0 が導けます。


(6) 線形代数の問題の証明方法

  ・例題4.4のパラメータ表示が分かりづらかった。

  ・今日の授業の基底の例題が分かりづらかったです。特に(x, y, z, w)をs, tで表すところが。

  ・なぜ x = -(5/3)s + (2/3)t,y = -(2/3)s - (5/3)t,z = s,w = t となるのかわかりません。

説明が速かったため,わかりにくかったかもしれません。この例題では,連立一次方程式の拡大
係数行列に対して行基本変形を行っていくと,同値な次の連立方程式が得られます。

   x + (5/3)z - (2/3)w = 0
   y + (2/3)z + (5/3)w = 0

方程式が2つなので,自由に値を決められる変数は2個です。そこで,この変数として z,w を
取り,これらの値をそれぞれ s,t とすると,上の方程式より,このときの x,y の値は次のよう
に書けます。

   x = (5/3)s + (2/3)t
   y = -(2/3)s - (5/3)t
   z = s
   w = t

これを整理すると,方程式を満たすベクトル (x, y, z, w)^T は,次の2つのベクトルのそれぞれ
s 倍,t 倍の和(すなわち線形結合)で書けることがわかります。

   ((5/3), -(2/3), 1, 0)
   (-(2/3), -(5/3), 0, 1)

したがって,部分空間の次元は2で,この2つのベクトルが基底です。


(7) 全般的に

  ・段々と線形も複雑になってきたと思う。でも,黒板が見易かったりして,良いです。
  ・前期に比べて,概念的なことが増えましたね。
  ・部分空間のところが難しかった。
  ・1次独立・1次従属の解説がわかりやすかったです。授業は,全体を通してもわかりやすい
   ので,これからもこんな感じがいいです。

確かに,前期は計算練習という側面が強かったのに対し,後期は新しい概念が数多く出てきます。
線形代数では,もともと幾何ベクトルに対して成り立つ様々な性質を応用して,他の対象をも解
析しようとするので,そのためにどうしても抽象化を行い,概念が多くなってしまいます。上に
も書きましたが,新しい概念が出てきたら,それが幾何ベクトルの場合に何を意味するかを考え,
その上で他の線形空間での例を考えるのが,理解するうえで役に立つと思います。


II. 授業方法に関する質問・コメント

(1) 難易度について

  ・内容が非常に難しく,理解に苦しみました。前回の復習の時間をもう少し取ってほしい。
  ・今日の内容は難しいと思った。
  ・丁寧でわかりやすいけど,やっぱり難しい。。。
  ・部分的にわからないところもありますが,教科書を見て復習すれば何とかなりそうです。
  ・分かりやすい講義だと思います。でも,内容に少し難しさを感じるので,試験では考慮し
   てほしいと思います。
  ・演習問題など解説してもらうとなんとなくはわかるのですが,実際に自分でやろうとする
   とやり方がわからないものもあり不安です。
  ・今のところ,わからないことはないです。
  ・まだ復習していないからわからない。特に問題ないです。
  ・全体的にイマイチ。

少し難しいと感じる人が多かったようですね。復習の時間は,現在でもかなり長く取っています
ので,これ以上増やすのは難しいです。講義では,できるだけ例や例題を多く出して説明するよ
うにしますので,後でそれらをもう一度見て,解き方を追ってみてください。


(2) 説明について

  ・わかりやすかったです。
  ・けっこう分かりやすかったです。
  ・説明が丁寧でわかりやすい授業だ。
  ・例題を多くやってくれてわかりやすい。
  ・前期よりも非常に分かりやすいです。
  ・他の講義に比べると著しくわかりやすいです。
  ・すごく分かりやすい授業で,最高です!
  ・難しいところ,ややこしいところなどは,細かい説明をして頂けるとありがたいです。
  ・簡単な所は速くして,難しい所はしっかり説明してほしい。

わかりやすいという感想が多くて,よかったです。メリハリをつけた説明については,心がけて
みます。


(3) 進度について

  ・書くスピードが速いです。
  ・少しペースが速すぎると思います。
  ・書く量が多くて,遅れるとわからなくなります。
  ・書くのでいっぱいいっぱいで理解する時間がほしい。
  ・ペースが速くてどんどん進んでいってしまうので,また黒板に書く量が多いので,板書を
   しているだけで理解する前に先へ進んでいってしまう。
  ・進む速さもちょうど良いし,黒板の字もきれいなので良いと思う。
  ・黒板に書く量が多いので,書くことに精一杯になってしまうことがあります。
  ・授業を進めるスピードも板書もちょうどいいと思いますので,このままでお願いします。
  ・コメントは特になし。理解が追いつく授業の教え方と速さなので,このままのやり方で
   やっていって欲しい。
  ・説明が少し丁寧すぎる嫌いがある。それ故進みが遅いように感じることがある。あと部屋
   の空気が澱んでいて不快。

書くスピードが速いというコメントが多いですね。わかりやすい講義にするため,例を多く出し
たり,定理の説明も口で言うだけでなく黒板に書くようにしているのですが,その結果として,
書く量は多くなってしまいます。

講義は基本的に教科書に沿ってやっているので,皆さんには,講義前に教科書を読み,どんな新
しい定義・定理が出てくるかを掴んでおく
ことを勧めます。そうすれば講義の流れがわかるので
ノートも取りやすくなるはずです。また,講義では,説明の都合上,教科書にある定義・定理も
黒板に書いていますが,時間がなければそれらを省いてノートを取ることも可能となります。


(4) 板書について

  ・板書も見やすくて特に意見はありません。
  ・黒板の文字が見やすくてわかりやすいです。
  ・字が見やすくて助かる。でも書く量が多すぎ(>_<)!! 演習問題をもっとやってほしい気
   もなくはない(^笑^)。

板書については,スピードは別として,特に問題はないようですね。演習問題については,後で
触れます。


(5) 前回の復習について

  ・前回の復習もしてくれるからわかりやすい。
  ・毎回,先回の復習をして頂けるのは助かります。
  ・質問は特にありません。授業のはじめの前回の復習はぜひ続けてほしいと思います。
  ・授業の初めに前回の内容をまとめて復習するのが,前回の範囲を思い出して授業に取り組
   めるので,それは続けてほしい。
  ・先週の復習を授業のはじめにするのは助かります。特に嫌な点もなく,このままでいいと
   思います。

講義の初めの復習は評判がいいようですね。これからも続けたいと思います。


(6) 演習について

  ・毎回演習問題を出すのはいいと思う。
  ・丁寧に勧めてくれているので,わかりやすい。課題も適度だと思う。
  ・レポート課題がもう少しあった方が良いと思った。
  ・授業の中でもう少し問題を解いてもらいたい。丁寧でわかりやすい授業であると思う。
  ・とてもわかりやすい授業です。毎回自習用の課題を出してくれるとうれしいです。
  ・授業で解説はしなくてもいいので,宿題を毎週プリントに刷って渡してほしい。答えは次
   の週の水曜日くらいにHPで出せば,やる気のある人はやると思う。
  ・授業の最初にやる復習は◎。授業の進む速さもちょうど良いぐらい。演習は,解答をプリ
   ントにしてくばってほしい。

自習用の課題がほしいという意見が多いですね。今までは,講義中に例題や演習をやるに留めて
いましたが,これからは,2,3週に1回程度,自習用のプリントを配るようにします。解答も
付けるようにします。


(7) その他

  ・暑い。
  ・教室の空気が悪かった。
  ・板書が見やすく,説明がとても丁寧で分かりやすいです。教室の空気が悪いので,送風で
   いいのでエアコンをつけてほしいです。今日の内容はあまりよく分かりませんでした。


上でもありましたが,「暑い」「空気が悪い」という意見がありますね。教務に確認したところ,
残念ながら今の季節はエアコンをつけることができないそうなので,必要なら窓の近くの人が窓
を開けるようにしてください。


それでは,また何か意見や質問があれば,気軽に出してください。


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