2004年度後期 応用数学 第1回質問シート集計結果
第1回の質問シートへの回答をありがとうございました。
授業でわかりにくかった点の指摘や授業方法に関する意見など,参考になりました。
以下に頂いた質問・意見とそれへの回答を載せます。意見に関しては,今後の授業にできるだけ
活かしていきたいと思います。
なお,このページの構成は以下の通りです。
I. 授業内容に関する質問・コメント
II. 授業方法に関する質問・コメント
I. 授業内容に関する質問・コメント
(1) 計算機における実数の表現について
・32ビットの正規化表現の指数部の n が -125 ≦ n ≦ 128 となっているが,n=0 を含めても
2ビット余るのですが,何に使われているんですか?
7ビット全部を使うと -127 ≦ n ≦ 128 の数が表現できるので,使われていないビットパターン
が2通りあることになりますね。そのうち1つは,すべて 0 というパターンで,これは数値 0 を表
すのに使います(ケチ表現のため,仮数部すべてを 0 にしただけでは 0 を表せないことに注意)。
なお,このパターンは,仮数部の値によっては非正規化数を表すのにも使いますが,詳細は省略
します(興味のある人は,たとえばこのページを見てください)。
残りの1つはすべて 1 というパターンで,無限大や NaN(Not a Number)を表すのに使います。
たとえば正の数を 0 で割った場合,結果は無限大となり,数学的に定義されていない演算,たと
えば 0 / 0 を行った場合,結果は NaN となります。
(2) 非線形方程式の解法について
・3次収束や4次収束もあるのか?
・ニュートン法以外で,2次収束する方法はあるのか?
・解の収束性で授業で示した以外の方法がありますか?
3次収束や4次収束もあります。たとえば,ニュートン法を拡張して2階の微係数 f"(x) まで
を使って計算を行うベイリー法という方法がありますが,これは3次収束します。ベイリー法
については,2003年度応用数学の期末試験問題とその解答を見てください。また,ニュートン法
において,解においてたまたま f"(x)=0 が成り立っている場合は,やはり3次収束することが
2次収束の証明と同様にして示せます。
また,2次収束する他の解法の例としては,非対称行列の固有値を計算するための QR法が
あります。今回の授業では時間の関係で扱えませんが,興味のある人は 森正武著「数値解析」
を見てください。
・n次元ニュートン法がよくわからなかった。
基本的な考え方は1次元の場合と同じで,ベクトル x のベクトル値関数 f(x) に対して多変数の
テイラー展開を行い,1次の項までを取って線形化して得られる連立一次方程式方程式を解き
ます。2変数の場合でやってみると分かりやすいと思います。また,教科書にも説明が載って
いますので,そちらも見てみてください。
・ニュートン法をやらなければならないようなスピードを要する莫大な計算は,どんな時に使い
ますか?
・ニュートン法は計算機の solve 機能で使っているが,二分法を使うような機会はどういった
時か。
二分法には計算の安定性,および f'(x) を計算しなくて済むというメリット,ニュートン法には
高速性,および連立非線形方程式への拡張が容易であるというメリットがあるので,目的に合
わせて解法を使い分けます。
たとえば,1変数で性質が良く分からない方程式を解くときは,安全性を重視して二分法を使う
のがいいでしょう。一方,常微分方程式の数値解法で陰解法と呼ばれる解法では,時間ステップ
を1つ進めるごとに方程式を解く必要がありますが,多変数の連立・非線形の常微分方程式の
場合はその計算量が膨大になるので,ニュートン法を使います(そもそも,二分法は連立非線形
方程式に対して簡単には拡張できないという根本的な問題もあります)。
(3) ラグランジュ補間・ニュートン補間について
・今日の授業の最後のところ(ニュートン補間)が良くわからなかった。
・ニュートン補間の n=3 の式で,a2 を求める式は
a2 = {y2 - f1(x2)} / {(x2 - x0)(x2 - x1)}
では?(黒板では分母が (x1 - x0)(x1 - x1) となっていた。)
ニュートン補間の計算法については,講義ノートで少し丁寧に書いたので見てください。また,
式の間違いについての指摘はその通りです。すみません。講義ノートでは訂正しておきました。
・補間のところで,n+1 個のデータ点を通る n 次関数が唯一に定まるというのは,
a0, a1, ... , an に関する連立一次方程式
y0 = a0 + a1 x0 + a2 x0^2 + ... + an x0^n
...
yn = a0 + a1 xn + a2 xn^2 + ... + an xn^n
(ただし ^n は n 乗を表す)の解が唯一に定まるからと考えてOKですか?
だから,ラグランジュ補間とニュートン補間とは同じ結果になると考えていいんですよね。
その通りです。上記の方程式の解が唯一に定まることは,xi(i=0, 1, ... , n)がすべて異なる時に
係数行列の行列式が非零となることから示すことができます。詳しくは,講義ノート第3章の章
末問題を見てください。
・コンピュータで関数の補間等の計算をするのは,実験の時にも役立ちそうで興味深かった。
・いろいろな近似法を学んできたが,実際の生活ではどの近似がどこで使われていて,どの
ような理由でそれが使われているのかということが少し気になった。
グラフを描画してくれるソフトでは,離散的な点でのデータを与えると自動的に曲線で補間し
てくれるものがありますが,その場合,多くはスプライン補間が使われています。多項式補間
と違って Runge の現象を起こさず,滑らかな曲線が得られるからです。また,第4章で扱う
数値積分では,被積分関数のラグランジュ補間が基礎となっています。
(4) 全般的に
・普段何気なく使っている関数電卓やパソコンの中でどんな計算がされているかがわかって
面白いです。
・計算機の中の人がどんな計算で値を求めているか,少しずつわかるのは面白い。
・難しかった。
・わかりやすい授業だった。
・僕は金田研で数値計算を扱っているので応用数学には興味があり,授業もわかりやすくて
とても有意義な時間となっています。
意見をありがとうございます。非線形方程式の解法や補間などは,最近は表計算ソフトで自動
的にやってくれる場合も多いですが,計算の中身を知ることで,アルゴリズムの特性や限界が
わかり,計算結果をより正確に解釈できるようになると思います。「難しい」という意見につ
いては,以下の授業方法に関する意見とも関係しますが,重要なポイントの強調や教科書との
対応付けをきちんとして,わかりやすい授業にするよう努めたいと思います。
II. 授業方法に関する質問・コメント
(1) 版書について
・添字とかが小さくて見えにくいので,もう少し板書を大きくしてもらえると嬉しいです。
・カーテンが閉めてあって暗い上に,字が小さいので,少し読みにくいです。
・字が薄くて読みにくいので,もう少し濃く書いてほしいです。
・黒板に式を書くとき,文字がベクトルなのかスカラーなのか見づらいです。あと,添字も同様。
・席が真ん中へんで,視力も1.0近くあるはずなのに,黒板の字が判別できないことが多々あり
ます。例えば,n と m,x とベクトルの x など。
字が小さい,特に添字が小さ過ぎて見づらいということは多くの人が感じていたようで,これ
以外にも多くの意見をもらいました。第4回の授業では,全体的にもっと字を大きく書くよう
に改めてみたのですが,どうでしょうか。
・板書にもう少し色(赤,黄)を入れて,ポイントを絞ったり,説明(多少汚くてもいいので,
口語的なほうがためになる)を入れてもらえると嬉しいです。
・何が重要か分かりません。
これについても,重要なポイントを色分けして示すなど,工夫してみます。
(2) 教科書との対応について
・授業が教科書通りに進んでくれると勉強しやすい。
・授業内容と教科書の対応がわかるとうれしい。
・教科書で言うとどのへんをやっているのかを言ってほしい。
教科書との対応については,授業の初めに言及するようにします。
内容については,大筋は教科書と同じですが,変えているところもあります。たとえば,数値
積分の誤差評価について,教科書では1から証明していますが,ラグランジュ補間の誤差評価
の結果を使うほうが簡単なので,講義ではそうしています。また,数値微分法,固有値の計算
については,教科書では扱っていませんが,重要だと考えたので,講義では入れました。
ただ,教科書にない部分については,講義ノートを読めば理解できるようにするつもりです。
また,教科書とは違った扱い方をしている部分については,講義を聞いた上で教科書を読め
ば,2つの異なる見方を知ることができて,より理解が深まると思います。
(3) 講義ノートについて
・HPで授業の復習ができるのは,かなり助かります。
・ノートが丁寧なので,あとで勉強がしやすくて分かりやすいです。今のところは問題なく
ついて行けています。
・ネットの講義ノートを早めに更新していただけると,次の授業の前に見られるので役立つ。
・板書するのにかなり精一杯になるので,授業より前にノートをアップするか,プリントで
配布すれば,もっと授業の理解度が高まると思います。
・ホームページの授業ノートがPDFでちょっと文字が見えにくかったのですが,何かいい方法は
ないですか?
講義ノートについては概ね好評なようで,よかったです。講義の前にアップするのは時間的な
問題もあって難しいのですが,講義があった週の金曜日までにはアップするよう努力します。
PDF ファイルについては,研究室のプリンタできれいに印刷できることを確認していますが,
どうしてもうまく印刷できない場合は連絡ください。
(4) Java プログラムを使ったアルゴリズムの動作の実演について
・パソコンを利用して実際に収束するところを見ると,理解しやすかった。
・スクリーンでプログラミングを実演してくれるのがわかりやすくて良いと思う。
Java による実演については,昨年度も評判が良かったので,今年度はより種類を増やすとと
もに,HP にもアップロードして各自が自分で動作を確かめられるようにしたいと思っています。
ニュートン法とラグランジュ補間については既にアップしましたので,ぜひ試してみて下さい。
(5) 演習について
・まだ授業が始まったばかりで問題演習がないので,授業中に何かやってもらえるといいです。
できるだけやりたいと思いますが,時間の関係であまり多くはできないかもしれません。
講義ノートの各章の末尾に章末問題を付けましたので,ぜひ見てみてください。これらは主に
昨年度の講義のレポート課題と期末試験問題から取ったもので,解答は昨年度のページを
探せば見つかります。
(6) 期末試験について
・どうもコンピュータを使った計算が多いので,テストはどういった形になるのかが不明です。
期末試験は,勉強したアルゴリズムについて理論的なことを問う問題(たとえばニュートン法が
2次収束することを証明する)と,アルゴリズムに従って実際に手計算や電卓による計算を行
ってみる問題(たとえばニュートン法を3ステップだけ計算してみる)とが主になる予定です。
昨年度の期末試験問題や,先日出したレポート課題のような感じです。
なお,第1回の授業で言ったように,受講者からの期末試験問題募集も行いますので,ぜひ
積極的に参加してください。
(7) その他
・プロジェクターを10〜15分以上使わないときは電源を切ってほしいです。
・プロジェクターの前に本を置いたとき,反射してまぶしかった。
気が付きませんでした。プロジェクターをしばらく使わないときは,電源を切るようにします。
それでは,また何か意見や質問があれば,気軽に出してください。
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