2004年度後期 応用数学 第2回質問シート集計結果


第2回の質問シートへの回答をありがとうございました。参考になりました。
以下に頂いた質問・意見とそれへの回答を載せます。意見に関しては,今後の授業にできるだけ
活かしていきたいと思います。

なお,このページの構成は以下の通りです。

  I. 授業内容に関する質問・コメント
  II. 授業方法に関する質問・コメント



I. 授業内容に関する質問・コメント

(1) 補間法について

  ・補間をする際,ただ補間点を増やすだけでは,かえって誤差が大きくなってしまうという
   仕組みがわかった。

  ・ラグランジュ補間よりもスプライン補間の方がうまく補間できる気がするし,スプライン
   は自分でも思いつく方法だが,ラグランジュは1つの式で補間するのでムリがあるように
   思える。

 講義では,いくつかの関数について,等間隔のラグランジュ補間では補間点を増やすに従って
 かえって誤差が大きくなってしまうことを数値実験で示しました。実は,どんな関数に対して
 この Runge の現象が起きるかも,理論的に解明されています。興味がある人は,たとえば
 伊理正夫著「数値計算の常識」を見てください。

 また,同じ多項式補間でも,標本点を等間隔に取るのではなくうまく不等間隔に取ると,
 1/(1+x^2) のような関数に対してもうまく補間を行うことができます。これは教科書にチェビシェフ
 補間
ルジャンドル補間として紹介されています。


(2) 数値積分法について

  ・数値積分法の内容が難しいです。

 台形公式やシンプソン公式は,積分したい関数をまず各区間において多項式で補間し,その多
 項式を解析的に積分するという考え方に基づいています。したがって,補間が理解できれば,
 これらの数値積分公式も容易に理解できる
と思います。誤差評価についても,講義からわかる
 ように,ラグランジュ補間の誤差の評価式を積分するだけです。


(3) 数値微分法について

  ・数値微分の所で,前進差分,中心差分,後退差分の方法がありましたが,中心差分が誤差
   が最も小さいので使うのには一番良い方法だと思いました。しかし前進差分や後退差分を
   使ったほうが良い場合があるのか気になったので,具体例があれば説明してほしいと思い
   ます。

 関数 f(x) が与えられて微係数を計算するのであれば,中心差分が誤差が小さいので最も良い
 方法です。しかし,偏微分方程式の解法などでは,第7回の講義でやったように,未知関数 f(x)
 の微係数を差分で表現する必要が出てきます。このときは,たとえば現在の関数値と次の時間
 ステップでの関数値とを使って現在における ∂f/∂t の値を計算しようとすると,どうしても
 前進差分を使わざるを得ないことになります。

  ・前回の授業の前進差分の誤差で,誤差を最小にする h について
    h = 2√(|f(x)/f"(x)|ε) = 2√ε
   と,|f(x)/f"(x)| が消えるのがイマイチわからなかったです。

 これは数学的な根拠があって |f(x)/f"(x)| を消しているのではなく,「f"(x) がわからないから,
 とりあえず f(x) と同じオーダーの量であると仮定しよう」ということで消しているだけです。f"(x)
 のオーダー(f(x) と比べて)がわかるのであれば,それを代入したほうが良い h の値が得られ
 ます。


(4) 常微分方程式の解法について

  ・f(x,y(x)) = f(xi,y(xi)) + (∂f/∂x)(x-xi) + (∂f/∂y)(∂y/∂x)(x-xi) + O((x-xi)^2) とあるところ
   が少しわかりにくかったです。上の式は,
   f(x,y(x)) = f(xi,y(xi)) + (∂f/∂x)(x-xi) + (∂f/∂x)(x-xi) + O((x-xi)^2) となってしまうのでは…。

 f(x,y) は x と y の2つの関数ですが,y は実は x の関数なので,f(x,y) は直接 x に依存
 するとともに,y を経由しても x に依存しています。前者の経路に対する偏微分が ∂f/∂x,
 後者の経路に対する偏微分が (∂f/∂y)(∂y/∂x) であり,これらは別のものです。詳しくは,
 解析学の教科書を見てください。

  ・f(x,y(x)) = f(xi,y(xi)) + (∂f/∂x)(x-xi) + (∂f/∂y)(∂y/∂x)(x-xi) + O((x-xi)^2)
   = f(xi,y(xi)) + O(h) は (∂f/∂x)(x-xi) + (∂f/∂y)(∂y/∂x)(x-xi) + O((x-xi)^2) をひっくる
   めて O(h) ということですか?

 その通りです。

  ・ホイン法の方がオイラー法よりも精度よく結果が得られるようですが,オイラー法を用い
   る利点はどのようなものですか?

 オイラー法は精度があまり高くないので,実際に計算するにはホイン法や,それより更に高精
 度なルンゲ・クッタ法(教科書参照)のほうがよく使われます。しかし,オイラー法はもっと
 も基本的な解法であり,ホイン法の内部ではオイラー方の1ステップ分の計算を利用するなど
 理論的にも重要なため,講義で紹介しました。

  ・オイラー法などで,誤差が一番小さくなるときの h を出すにはどうしたらよいのでしょうか。

 オイラー法では,刻み幅を小さくしていくと最初は精度が向上しますが,各ステップからの増
 分が小さくなっていくため,大きい数に非常に小さな数を加えることになり,あるところから
 先は丸めによる情報落ちの影響が大きくなり,精度はむしろ悪化します。しかし,最適な刻み
 幅を理論的に求めるのは,複数ステップでの累積を考慮しなければならないこと,方程式の右
 辺の非線形性などのため,数値微分の場合よりはずっと難しくなります。

 ただし,常微分方程式の解法では,刻み幅を小さくするにつれてステップ数が多くなるため,
 実際には精度の面から最適な刻み幅を決めるというより,計算時間との兼ね合いで決めること
 が多くなると思います。

  ・今日(11/15)の授業内容が難しくてよくわかりませんでした。
  ・常微分方程式の解法の流れが良く分からなかった。
  ・常微分方程式の解法(オイラー法,ホイン法)がよくわかりません。

 確かにホイン法は少し複雑なので,講義ノートや教科書で復習してみてください。また,第2
 回のレポートではオイラー法とホイン法のプログラムを書く問題を出したので,これをやって
 みると解法の流れが少しわかりやすくなるのではと思います。


(5) 全般的に

  ・もう少しアルゴリズムを講義してほしい。
  ・解法の原理はわかりやすく説明されますが,具体的にどのように計算すればよいのか,
   あまりよくわかりません。板書はとても見やすくてよいです。
  ・実際にコンピュータを用いて数値計算を自分でしてみたいと思った。プログラミングも
   必要かなと思った。

 確かに,講義でアルゴリズムの話をもう少し前面に出すべきでしたね。偏微分方程式の解法,
 連立一次方程式の解法,固有値計算法と進んでいくとアルゴリズムも段々と複雑になってく
 るので,今後はそのように心がけます。

  ・わかりやすい授業だと思います。
  ・今のところわかりやすく授業についていけてます。
  ・今のところ問題ありません。
  ・だいたい理解できた。
  ・この調子でお願いいたします。

 ありがとうございます。


II. 授業方法に関する質問・コメント

(1) 版書について

  ・黒板が見やすいです!
  ・版書の添字が見やすくなりました。
  ・以前より黒板が見やすくなった気がします。
  ・黒板が見やすくなってよかったです。ホームページに載っているので勉強しやすいです。
  ・字が見やすくなってよかったです。
  ・前に比べて黒板の字が大きくなり,見やすくて良かった。黒板に書かれる内容や黒板の使
   い方などは,かなり板書を写しやすくて良いと思う。
  ・計算の途中の式を省かないで書いてくれるので,とても分かりやすい。

 前回の質問シートで意見をもらって以来,字を少し大きく書くようにしました。見やすくなっ
 たようでよかったです。


(2) 講義ノートについて

  ・ホームページのノートがわかりやすく,自分でよく勉強できるので良いです。
  ・ホームページで復習することができて,良いと思いました。演習を理解するのにとても役
   立ちました。
  ・ホームページの講義ノートはきれいにまとめてあって分かりやすかった。授業といっしょ
   に勉強すると,より分かりやすそうだと思った。
  ・ネット見ました。二分法など,具体的な数値で計算されたものが載っていて,とても分か
   りやすかったです。
  ・分かりやすい授業ありがとうございます。HPのノートもすごい役立ってます。
  ・講義で聞き逃したりノートを写しきれなかったのが,HPを見て補えるので,とても便利だ
   と思います。
  ・講義ノートをホームページで見れるのはとてもいいと思います。講義の前にHPに載せても
   らえれば,予習ができるのでよりありがたいです。
  ・ホームページが便利です。

 講義ノートは好評のようですね。このノートは徐々に更新してより良いものにしていきたいと
 思っていますので,わかりにくいところや改善希望点などがあったら,ぜひ教えてください。
 また,各章の末尾に練習問題が載っていますので,見てみてください。基本的には,講義で
 学んだことだけを使って解けるようにしています。

 講義の前にHPにノートを載せることについては,今後の課題として考えます。


(3) Java プログラムを使ったアルゴリズムの動作の実演について

  ・数値計算の計算結果がパソコンで示されていてわかりやすい。また,授業ノートがHPに公開
   されているので,授業では聞くことに集中できるのでよい。

 ありがとうございます。Java プログラムは一通りホームページに載せてありますので,自分で
 いろいろパラメータを入力して実行してみると,より理解が深まると思います。


(4) レポートについて

  ・レポート課題を行ったら,授業の内容がよく分かるようになったと思います。HP上のプロ
   グラムも分かりやすいと思いました。
  ・前回レポートをやるために,ホームページの講義ノートも参考にしたが,わかりやすく書
   かれていたのでよかった。
  ・授業を聞いているだけではよく理解できてないけど,演習で実際に手を動かしてみたら,
   なんとなくだけど理解できてよかった。
  ・レポートはノートを見ながらとけるくらいの難度と量でよかったと思います。

 レポートは昨年も4回のうち2回提出ということで出しましたが,問題数が多すぎて大変とい
 う声が多かったので,今年は少し分量を減らしました。基本的には,講義ノートの章末問題と
 同様,講義で学んだことがわかっていれば解けると思います。提出をしない回のレポートにつ
 いても,問題だけは目を通しておくことを勧めます。


  ・レポートの解答はHPに載せる予定なのでしょうか?

 第1回レポートの解答と講評はHPに掲載しました。今後のレポートでもそうする予定です。


(5) その他

  ・HPは,URL直接では入れなかったです。杉原研のHPからリンクをたどって入りました。
  ・HPが見れませんでした。
  ・HPが時々見れないのはなんでですか?

 HPが見られないというコメントが2通ありましたが,もしかしたらアドレスの書き写しミスか
 もしれません。杉原研の「メンバー」のページからリンクをたどって入ることもできます。
 HPが時々見られないとしたら,サーバのメンテナンスのためかもしれませんので,少し時間を
 おいてアクセスしてみてください。

  ・家のPCで「講義ノート」を印刷しようと思ったら,真白の紙が出てきてダメでした。
   「Adobe Acrobat」のファイルは印刷できないのでしょうか。
  ・あと,家のPCに Power Point が入っていないせいだと思うんですが,講義で使った
   Power Point が開けません。

 講義ノートが印刷できないとしたら,使っている Adobe Acrobat Reader が古い可能性があり
 ます。Adobe 社のページから無料でダウンロードできますので,バージョン6.0 以降を使って
 みてください。
また,どうしても印刷できなければ,直接私の部屋に来るか,メールで連絡を
 ください。

 講義で使った Power Point についても,必要であれば,私まで連絡をください。

  ・来週(11/22)休講とのことですが,補講はあるのでしょうか。

 11/22 については,補講はありません。代わりにオイラー法の大域離散化誤差について自習
 してくれるようお願いしましたので,昨年度の講義の第4回レポートその解答を見ておいて
 ください。


講義も既に半分を過ぎました。後半は少し複雑なアルゴリズムへと進みますが,いずれも重要
で役に立つものなので,講義ノートや教科書,質問シートなどを活用してぜひ理解を深めてくだ
さい。


講義のページに戻る
Topに戻る