第2回レポートの解答と講評

 第2回レポートの提出者は16名でした。今回は第1回レポートに比べて扱う問題が少
 し難しくなったためか,第1回に比べて提出者が大幅に減ってしまったのが残念でした。

 第1問,第2問はそれぞれ常微分方程式の解法,加速法に関する基本的な問題,第
 3問,第4問はそれぞれ数値積分法に関する計算問題と少し理論的な問題です。各
 問題とも最初の小問は良くできていますが,後の方のプログラミングが必要な問題,
 計算が必要な問題では,正答率が大きく落ちてしまいました。まだプログラミングが
 苦手な人が多いのかもしれません。

 解答を載せますので,見てください。第1問の解答については森大介君のレポート,
 第2問から第4問の解答については私が作成したものを載せておきます。なお,各問
 の考え方,間違いが多かった箇所などを以下にまとめておきます。


 問題1

 (1) 正答率 100%
 オイラー法のプログラムを書く基本的な問題です。全員よくできていました。

 (2) 正答率 69%
 ホイン法のプログラムを書く問題です。ホイン法では,第 i ステップでの値 y(i) が与え
 られたとき,まずオイラー法で次のステップの値 Y(i+1) = y(i) + h*f(x(i),y(i)) を求め,
 これを再び常微分方程式の右辺に代入して F = f(x(i)+h,Y(i+1)) を求めます。そして,
 f(x(i),y(i)) と F との平均を使い,y(i+1) = y(i) + h/2 * (f(x(i),y(i)) + F) と,次のステップ
 での値を求めます。典型的な間違いとしては,Y(i+1) として,小問(1)で求めたオイラー
 法の値を使ってしまった解答がありました。Y(i+1) は,あくまで第 i ステップまではホイ
 ン法で計算し,その次の1ステップをオイラー法で計算した値でなければなりません。


 (3) 正答率 63%
 小問(1),(2)ができていた人は,ほとんどできていました。なお,問題では手計算を
 する場合のことも考えてステップ数を10としたのですが,そうするとオイラー法は第1
 ステップで1に収束してしまい,ホイン法は逆になかなか真の解に近づかないなど,
 問題としては不適切でした。すみません。n=20,n=30 として実験してくれた人もあり,
 そうするとオイラー法に比べてホイン法の収束が速いことが観察できます。詳しくは
 森大介君のレポートを見てください。


 問題2

 (1) 正答率 94%

 (2) 正答率 100%

 小問(1),(2)は全体的によくできていました。詳しくは上記の解答を見てください。

 (3) 正答率 50%

 小問(1)で求めた c(n) の式(a(n),a(n+1),λ1の式)に小問(2)で求めたλ1の近似値を
 代入するだけですが,(1)の展開式(c(n) を b,λなどで表した式)に代入してしまった人
 が半分ほどいました。こうすると,結果として得られる d(n) は b,λなどの式になってし
 まいます。数列 d(n) を作ったのは極限値 b(0) を求めるためであり,かつ,λ1 がわか
 らないのと同様に一般には λ2,λ3 ... などもわからないのですから,これでは意味が
 ありません。



 問題3

 (1) 正答率 100%
 これは積分の変数変換を行うだけです。全員よくできていました。

 (2) 正答率 75%
 指定した公式を使って被積分関数を約分すると,両端で0に近づく因子の負のべき乗が
 なくなり,被積分関数が特異性を持たなくなることが示せます。約分で計算間違いを
 した人が何人かいましたが,それ以外はよくできていました。

 (3) 正答率 17%
 小問(2)ができれば,その被積分関数を台形公式で積分するだけですが,関数の形が
 複雑だったためか,正解は問題3の選択者12人中わずか2人でした。あと,積分値を
 足し込んでいく変数の初期化を最初の1回しかやっていない人が何人かいましたが,
 初期化は当然 n を変えるたびに行わなければなりません。


 問題4

 (1) 正答率 100%
 これは実際に項別積分を行うだけです。全員よくできていました。

 (2) 正答率 25%
 台形公式に,フーリエ級数展開の式を代入します。すると2重の Σ が出てくるので,そ
 の順番を変え,内側の Σ を等比級数の和の公式を使って計算します。

 (3) 正答率 0%
 少し難しかったようで,残念ながら正答者はいませんでした(いいところまで行った人は
 1人いましたが)。与えられた定理を使うと,C^m 級関数の場合に台形公式の誤差が
 h の m 乗で減衰する
ことが示せます。ここで,解析関数の場合は,いかなる正の整数
 m に対しても C^m 級関数なので,誤差は実は h のいかなるべき乗よりも速く減衰する
 
ことがわかります。


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