第2回レポートの解答と講評

 第2回レポートの提出者は6名でした。今回の問題はブラック-ショールズモデル
 を中心に,プットオプションの価格公式の導出,コールオプションの理論価格と
 実際の市場価格との一致の検証,差分法による数値実験などを扱う問題でした。
 既に第1回レポート提出と授業ノート担当とを両方終えた人が多く,今回の提出
 者は多くありませんでしたが,レポートは概してよくできていました。

 解答例として,松場弘明君のレポート小多秀明君のレポート(問題2,3のみ)
 を掲載しますので,参考にして下さい。他にも優れたレポートはありましたが,
 TeX で書かれていてホームページ上に掲載しやすかったこともあり,この2つを
 選びました。

 以下,各問題に対するコメントを述べます。


 問題1

 (1) 問題の指示に従っていけば計算できます。コールオプションを買い,かつ
    プットオプションを売ると,合計のペイオフは簡単な関数 S_T - K になります。

 (2) 時刻 0 において株式を1株購入し,かつ銀行から K*exp(-rT) のお金を借
    りるというポートフォリオを作ると,満期での利益は (1) の結果と同じになり
    ます。すなわち,株式と銀行から借りたお金により,(1)の組み合わせの複製
    ポートフォリオ
を作れたことになります。

 (3) 無裁定原理より,(1) の組み合わせと (2) の複製ポートフォリオは時刻 0
    でも同じ価値を持つので,プット・コール・パリティの式が得られます。ここで,
    コールオプションの価格にブラック-ショールズ公式を代入すると,プットオプ
    ションの価格公式が得られます。


 問題2

 (1) これは,第1回レポートの問題1と同様にやればできます。

 (2) ブラック-ショールズ公式において,S_0,r,T は実際の市場データを使い,
    σは市場でのオプション価格と理論価格とがなるべくよく合うように定めます。
    松場君,小多君のレポートからもわかるように,ブラック-ショールズ公式に
    よる価格は,モデルを非常に簡単化している割には,市場価格とかなりよく
    一致
していることがわかります。


 問題3

 (1) これは,ホームページに掲載したCプログラムをそのまま使えばできるはず
    です。ただし,空間方向と時間方向の分割数が安定性の条件を満たすよう
    に気を付けてください。

 (2) 安定性の条件を満たさない場合,陽的差分法により計算した価格は振動し,
    時間ステップとともに指数関数的に増大します。松場君,小多君のレポート
    を見てください。ただし,時間ステップ M が非常に小さい場合は,振動成分
    が十分に大きくならないうちに満期に達するので,この現象が表面には現れ
    てこない場合があります。

 (2) 陰的差分法は絶対安定なので,陽的差分法の解が指数的に増大してしまう
    (2) の条件の下でも,正しい解を求めることができます。


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